Boba Dylana



ボブ・ディランのクロアチア騒動



昨年のRolling Stoneインタビューは、内容も多岐にわたり各方面で大きな話題になった。そのせいかいわゆる、「まとめ」的な記事を出したニュースサイトもいくつかあった。

5 Revelations From Bob Dylan’s Rolling Stone Cover Story


沢山の反響の中、最も思いがけなかったのがクロアチアの反応だった。上記記事でも多数のコメントが寄せられているが、最初に知ったのはツイッターだった。

"Croatians are mad at Bob Dylan because of what he said about Serbs and Croats"
というツイートを見たとき、最初、彼らが何に対して怒っているのかさっぱりわからなかった。

なので、インタビューをCroatiaで検索すると1行だけヒットした。

"Just like Jews can sense Nazi blood and the Serbs can sense Croatian blood."
(ユダヤ人がナチの血をかぎ分けるように、セルビア人はクロアチア人の血を察知する)

この1行に対し、クロアチアの極右政党、クロアチア権利党 (HSP)は、
「クロアチアに不勉強な、例えばボブ・ディランのようなクロアチアにとって良くない人物をリストアップしそれを公表し、入国禁止にする法律の提案」を早急に行うべきだ声明を出し法案を可決しようとした。

Pero Ćorić u ime HSP AS traži sačinjavanje popisa nepoželjnih osoba u RH

Right-wingers want Bob Dylan to apologise or they will insist on him being banned from Croatia (Croatian Times)
Right wing party HSP dr. Ante Starcevic has called for a black-list of people entering Croatia - including folk singer Bob Dylan.

The American legend caused controversy after telling Rolling Stone magazine last month: "Black people can sense Klan blood, Jews can sense Nazi blood and Serbs can sense Croat blood" in an interview about the roots of racism.

Now the party wants him banned from Croatia.

"We are sure Bob Dylan was not well-informed. "But if he does not apologize we will insist he be banned from visiting Croatia", party spokeswoman Kristina Culjak told the Croatian Times.

The call comes following Radio Split banning his songs from their play list.
「私達は、ボブ・ディランがよくわかっていないことを理解している。しかし彼が謝罪をするまで、クロアチアに入国させないことを主張する」

クロアチア国営放送局の一つ、Radio Splitは毎週月曜日にレギュラーで放送していたDuquesne Whistleをそのプレイリストから削除した。
Bob Dylan banned from Radio Split (Croatian Times)


クロアチアの有名な歌手、Mišo Kovačは、彼は何もわかっていないとディランを批判した。
Mišo Kovač: Nema Bob Dylan pojma. Ne’š ti njega legende! (Slobodna Dalmacija)





フランスではクロアチア人協会がディランを訴えると言い出した。
Croats in France to File Suit Against Bob Dylan (Balkanin Sight)

実際、訴えられたかは知らない。


今回、再度検索して多くの記事やコメントを見たが、ディランを擁護するようなものは皆無だった。なにぶん、クロアチア語なのでその解釈には全く自信が無いのだが…以下は少し気になった記事だ。

Davor Krile: Hajka na narodne neprijatelje (Slobodna Dalmacija)
Hrvatska genijalnost za autogolove (Tportal)
Idiotski vjetar (Novi list)

その他、クロアチアの新聞社のウエブ
Novi list
Jutarnji List
Slobodna Dalmacija




いろいろな記事やコメントを見ると「ディランはバルカンの歴史をわかっていない」という事をさんざん言われている。まぁ言うまでも無いことだが日本も他人事ではない。クロアチアを日本に置き換えたら、この国でも同じようにディランに対して反発する人達が出てくるだろう。が、全部が全部そうなるかと言えばそうはならない。クロアチアも同様だろうと思っていた。が、改めて記事やらコメントを見たが…果たしてどうなのだろう…

よく「隣の国なんだから仲良くしよう」みたいなよくわからないことをおっしゃる方がおられるが、普通は「隣の国なんだから仲が悪くて当然」というのが世界の認識だろう。EUもその根底には「仲が悪い」から出来たのだ。決して「仲が良いから」出来たわけではない。まぁ仲が良いとか悪とかじゃなく、やって行かざる終えないということだろう。例えば、アメリカも隣国と仲が良いとは思えない。メキシコにはやりたい放題。カナダはそれこそお隣なんだからMD(ミサイル防衛)一緒にやりましょうと誘うが、大昔にきっぱりと断られカナダはその軸をNATOに置いている。カナダ人はよく自国の国旗を持って旅行しているが、それは自国のアピールもさることながらアメリカ人に間違われたくないからだ(笑)。

前に、カナダの国旗を広める大使みたいなことをやってるカナダ人の歌手に会ったが、彼女は頼みもしないのにメープルリーフのペンとかメモパッドとかライターとか無理矢理に会う人会う人に配って回っていた。

因みにそのカナダでこのところ話題になっている「Pastagate(パスタゲート)」事件をご存じだろうか。

ケベックのパスタ屋さんの看板やメニューを見たフランス系の住民が、店主に「英語を使うのをやめてフランス語に書き換えろ」と言ったのだ。この英語禁止は以前から問題になっていたのだが、今回このパスタ屋さんの問題が明るみに出ると、実はうちもそうだ、いやオレも言われたと次々と名乗りでてきて大きな問題となりパスタゲートと名付けられたのだ。これなどもちょっと考えられないというか冗談のように感じてしまう事件だが実際に大きな問題になっている。







今月一日、クロアチアでボブ・ディランの本が出版された。デイヴィッド・ダルトン(David Dalton)のWho Is That Man? In Search of the Real Bob Dylanという本だ。






クロアチア版(159.00 HRK)



出版を記念して2月26日、ザグレブでイヴェント(プロモーション)が開かれた。
Otkriven pravi Bob Dylan?
Ou jes, još another Bob Dylan buk (Hrvoje Horvat)

イヴェントにはHrvoje Horvat (音楽ジャーナリスト・批評家)Zoran Marić (音楽監督・2010年、ディランのザグレブ公演オーガナイザー)Branko Komljenović (音楽レーベル・ディレクター)Nina Romić(アーティスト)が参加した。



Hrvoje Horvat


Zoran Marić

Zoran Marić はディランがサウンドチェックに現れた時の様子を語った。「ディランはウールの帽子を被り、同じくウールの黒い手袋をはめて真冬のような格好をしていた。(因みにそれは6月の事だ)」というようなエピソードを披露した。本やこのイヴェントの模様はウエブではそれなりに取り上げられている。しかし、問題の発言に関しては一切ふれられていない。

Hrvoje Horvatはディランの発言についてブログで書いている。
Dylan je Bog, Lustig je u pravu (Hrvoje Horvat)






Welcoming Bob Dylan - Zagreb - Croatia - 2010





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