Bob Dylan at the Crossroads
マイク・ブルームフィールド:ディランと初めて会ったのはシカゴのベアというクラブに彼が来ているときだった。ちょうど彼のファースト・アルバムが出た頃で、アルバムのライナーにギターが上手いだとか書いて合って.....実際は下手くそだった。で、そのことを言ってやろうと思って、彼に会いに行ったんだ。ディランは「僕はギタリストじゃない。詩を書いているんだ」と言ったよ。僕らは色んなことを話した。ディランは本当にいいヤツだった。すぐに友達になった。
ディランからギターを弾いてほしいと連絡が来たとき、ちょうど最高のギターを手に入れたところだった。それまでの生涯で最高のテレキャスターだ。ただしケースは無かった。
そのテレキャスターを持ってニューヨークへ行った。ディランの家で「Like A Rolling Stone」とかを教えられた。ディランは僕にBBキングのようなブルースを望んでいるのだろうと思っていたがそうじゃ無かった。
スタジオに行くとディランが「全部、君が説明してくれ」と言われた。ニューヨークの大物ミュージシャンを前にギターケースも持ってない自分が説明するなんてとんでもないと思ったが、プロの端くれと思ってやった。
ディランのセッションは本当に変だった。紙もチャートもコード・シートも何も無かった。でも当時の僕はまだかけ出しで大きなセッションも始めてだったから何も知らなかったんだ。もしその現場に居合わせたら多分すごく混乱してて変だと感じただろう。この後数え切れないほどセッションをやったけど、このときのディランとのセッションほど奇妙なのは無かった。
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Highway 61 Revisitedのレコーディングは1965年6月15日にスタートする。15日、16日と録音したあとレコーディングは一時中断し、7月24日、25日のニューポートに出演する。そして7月29日からレコーディングが再開し8月4日に終了する。
Like A Rolling Stoneは前半の2日....主に16日に録音された。
Recording Session 2 for "Like a Rolling Stone"
16 June 1965, Studio A / Columbia Records, New York City
Michael Bloomfield : Guitar
Joe Macho, Jr. : Bass
Bobby Gregg : Drums
Al Kooper : Organ
Paul Griffin : Piano
Bruce Langhorne : Tambourine
Producer : Tom Wilson
※以下の各音源は編集されていて完全ではない。
Rehearsal take 1 — 1:53
歌に入るとディランはギターをかき鳴らしながら力強くバンドをリードする。ポール·グリフィンはルーズに自由に弾いている。クーパーもクリアートーンで続く。するとディランが曲を止める「ちょっと待ってくれ、僕は出来ないよ。確認のためにちょっと演奏してるだけだ。本当にまだ出来ない」ディランは再びテーマに戻り曲を始める。ブルームフィールドとグリフィンが入ってくる。いい感じだ、豊かなアンサンブルが出来てくる。
しわがれ声で2番に突入する。ブルームフィールドは、グルーブを掴んだようだ。コントロール・ルームからキューが入り曲がブレークする。「ボブ、一人で演ってくれないか、そしたら君自信がアンプからどんな音を出してるかがわかる。少しでいいから頼むよ」ディランが歌い始める。再びキューが入る「OK、十分だ、プレイバックしてみよう」
Rehearsal take 2 — 3:03
「それじゃ始めよう」ディランが言う。「グレッグはどこだ?」ウイルソンがが言う。「1ヴァースだけやろう」とディランが言うと彼のギターが再び曲をリードする。タンバリン、ベース、ギター、オルガン皆まとまりがない。しかしブルームフィールドとクーパーは自分たちのポジションを見つけ前面に出てきた。が、長続きせず結局演奏はすぐに乱れた。
Take 1 — 3:10
ウイルソン「OK ボブ。みんな揃ったよ。始めよう。後でプレイバックするから言いたい事はその時に.......(クーパーがいることに気がついて)何をやってるんだ.......(クーパーが笑っている)....... OK スタンバイ。 CO 86446, 'Like a Rolling Stone,' リメイク、テイクワン」
「ちょっと待ってくれ、オルガンプレイヤーがモニターをしていない」誰かが言う
「見てないのかトム」ディランが言う
「テープを止めてくれ」ウイルソンが言う
カウントが入り曲がスタートする。
ディランが途中で曲を止める
ディラン「Naw, このパートをもう一回やろう」
(誰か)「1回と言ったのに2回やった」
ディラン「やった。でも終わらせたのは1回だけだろ? だよな」
ディランが「ライカローリングストーン」と歌いながらギターを弾き始める
(誰か)「そこじゃない、次のバースだ」
ディラン「No、No、No、ここ、ここなんだよ」
ディランが再び歌の意味を説明する。
ウイルソン「テープを止めてくれ」
ディラン「めちゃくちゃになったとしても続ける」
ウイルソン「OK 」
Take 2 — 0:30
すべてが混乱している。
Take 3 — 0:19
彼らは休息もとらずに続けた。すぐに止まったがこの曲の本当の姿が現れた瞬間だった。
Take 4 — 6:34
このテイクがマスターテイクになる。
Unslated take — 1:00
ウイルソン「みんな静かに。ボビー始めよう」
ディラン「初めていいかい?」
(誰か)「まだだ。赤ランプが点いてない」
ディラン「ダメなんだろ?」
(誰か)「続けよう」
(誰か)「それをプレイバックしてくれ。頼む」
Take 5 — 0:30
ウイルソン「ちょっと待って。OK、ローリング、ファイブ」
グリフィンが速いテンポ弾く。
ディラン「そうじゃない」と言って止める
(誰か)「そうだ、そうじゃない」
ディラン「どうやって始めるんだ?」と言ってゆっくりギターでテーマを弾いた。
Take 6 a–b — 2:06
ウイルソン「シックス ロール」と言うがスネアが入った瞬間曲を止める。
Take 6 b
ウイルソン「ピート、準備はいいか?」
ディラン「待ってくれ、最初に1バースだけやろう。録音なしでやらせてほしい」
ウイルソン「OK ローリング シックス」
ディラン「No! ロール シックスじゃないだろ。このバースをやるんだ」
と言って曲を始めるがすべてがバラバラだった。
ディラン「やめよう6分もあるんだ」
ウイルソン「君、一人でやったらどうだ」
Take 6 c — 0:36
ウイルソン「ローリング シックス」
"dime" とディランが歌った後で曲を止める
ディラン「やり直しだ、やり直し.....僕のギターでかくないか」
Take 8 (there is no seven) — 4:28
ウイルソン「スタンバイ ローリング エイト」
(コントロール)「調子が悪いのか」
ディラン「大丈夫だ」
カウントが入り曲がスタート、しかしバランスが悪い、3番に入ったところで中断するディランがまた「僕のギターでかくないか」と言う。
Take 9 — 0:20
ウイルソンの口笛で終わり
Take 10 — 0:24
「テン」ウイルソンがだるそうに言う。また口笛で終わり。
「何かがおかしい」ウイルソンが言う。
Take 11 — 6:02
「何がおかしいんだ.....」ディランが怒ったように言う
「イレブン」ウイルソン
ディランは既に飽きてるようだ。混沌としているが4番まで進んだのはこのセッションで2度目。混沌だけが生み出すすばらしい瞬間。
Take 12 — 0:29
ウイルソン「スタンバイ。OK、ローリン テイク トエルブ」
クーパーがイントロを弾き始めるとウイルソンが口笛で止める。
Take 13 — 0:49
ウイルソン「ヘイ、アル。さっきのイントロはやめておこう。サーティーン」
クーパーは計算したかのような演奏を試みるがうまくいかない。
ディラン「何で出来ないんだ.......OKもう一度やろう」と疲れた感じで言う。
Take 14 — 0:22
ウイルソンが「フォーティーン」と言う。ドラムがずれてるしディランもミスをする。
Take 15 — 3:18
3番に入り"tricks for you" にかかった時ビートが失速し曲が止まった。そしてセッションは終了した。
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というわけで、唯一完奏したワンテイクが本チャンになったというのも.....
プロデューサーのトム・ウイルソンはこのセッション終了とほぼ同時に解雇される。その理由はディランも知らない。
70年代に入りブルームフィールドは以前ほどに目立つ事は無くなったが地道に活動を続けていた。しかし一方でひどい麻薬中毒に陥っていた。そんなブルームフィールドを励まそうと思ったのかディラン80年11月15日、サンフランシスコ、ウォーフィールドでのライブにゲストとして彼をステージにあげた。彼との出会いなど2分にわたり紹介、初めて会ってから随分たっていたけど忘れていなかった、名前まで覚えていた。僕よりずっとギターが上手い、ライク・ア・ローリングストーンでギターを弾いてくれた、マイケル・ブルームフィールドに拍手を.....
I was playing in a club in Chicago, I guess it was about 1959 or 1960 and I was sitting in a restaurant, I think it was probably across the street or maybe it was even a part of the club, I'm not sure, but a guy came down and said that he played guitar.
So he had his guitar with him and he began to play. I said, 'Well, what can you play?' And he played all kinds of things. I don't know if you've ever heard of a man, does Big Bill Broonzy ring a bell? Or Sonny Boy Williamson, that type of thing? Anyway, he just played circles around anything I could play and I always remembered that.
Anyway, we were back in New York, I think it was 1963 or 1964, and I needed a guitar player on a session I was doing, and I called (him) up, I even remembered his name, and he came in and recorded an album. At that time he was working in the Paul Butterfield Blues Band.
Anyway he played with me on a record, and I think we played some other dates, but I haven't seen him too much since then.
Anyway, he played on "Like A Rolling Stone," and he's here tonight. Give him a hand...Michael Bloomfield
翌81年2月15日、ブルームフィールドは、サンフランシスコの駐車場の車の中で意識不明の状態で発見された。
▼Greil Marcus on Recording 'Like a Rolling Stone' (NPR)
▼The Rolling Stone Interview: Mike Bloomfield Part 1 (Jann S. Wenner)
▼The Rolling Stone Interview: Mike Bloomfield Part 2 (Jann S. Wenner)
▼Bob Dylan’s “Highway 61 Revisited”: Mike Bloomfield v. Johnny Winter (Jas Obrecht Music)
▼Michael Bloomfield & “Like A Rolling Stone” (Sean Wilentz)
▼1965 Recording sessions & concerts (Still On The Road/bjorner.com)
▼1980 A MUSICAL RETROSPECTIVE Tour (Still On The Road/bjorner.com)
▼ライク・ア・ローリング・ストーン (wikipedia)
●BOB DYLAN ENCYCLOPEDIA
●ライク・ア・ローリング・ストーン (グリール・マーカス/ 菅野ヘッケル 翻訳 )
2 コメント
何れも30秒~1分半程度。
http://www.bjorner.com/DSN00785%20%2865%29.htm#DSN01030
【mp3/256 http://hotfile.com/dl/148388116/a99cb48/BDlikearollingstonesessions.zip.html
http://bitshare.com/files/7feku16j/BDlikearollingstonesessions.zip.html
http://ul.to/jlshb4ny
http://www.filefactory.com/file/c3398e0/n/BDlikearollingstonesessions.zip ミラー・サイト四つ】
いつも本当にありがとうございます。