More Blood, More Tracks


The Bootleg Series Vol. 14



出る出ると噂され続けたBlood on the Tracksのブートレグ・シリーズがついに11月2日全世界同時発売される。
ボブ・ディラン、シリーズ最強となる『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』の完全生産限定デラックス版とスタンダード版、11月2日世界同時発売予定!(SMEJ)

シリーズ最強となる『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』から「きみは大きな存在(テイク2)」が本日解禁! また、デラックス版のパッケージ仕様も公開!(SMEJ)



Blood on the Tracksセッションの大まかな流れは以下のエントリーを参考にしてほしい
"Blood On The Tracks" final session


ここからは、最新のUNCUT、マイケル・ボナー(Michael bonne)氏の記事から大雑把な抜粋だ。





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今回、1CD、2枚組LP、デラックス・エディションの形態で販売される(およびダウンロード販売)。1CDには、ニューヨーク・セッションからセレクトされた10曲と未発表曲テイクの Up To Me が収録されている。デラックス・エディションには87曲収録されている。トータルでおよそ6時間。未発表曲は一つもない。

今までに知られてるニューヨークのセッションはディランとバンドによって始まる…というのが通説だった…が、実際は、非常に違うように見える。我々が最初に遭遇するA&Rスタジオのディラン、それは完璧に一人の状態だ。

9月16日昼過ぎセッションは “If You See Her, Say Hello” からスタートする。そこから数時間で、別テイクの “If You See Her, Say Hello”、“You’re A Big Girl Now” が3テイク、“Simple Twist Of Fate” と “Up To Me” がそれぞれ2テイク、そして “Lily, Rosemary と The Jack Of Hearts” と合計10テイクほど録音している。




ファーストテイクの "If You See Her, Say Hello” は素晴らしく、ディランは没頭している。最後のコードが鳴りやんだ静寂のあとフィル・ラモーンがトークバックで「とても素晴らしい」と言うのが聞き取れる。それは素晴らしいスタートだったがディランは数分のうちに、何か違うことを試し始める。テイク2は憂鬱で薄暗く、さらに失恋へのレクイエムが増している。

Simple Twist Of Fate” 最初の2テイク、ディランはコードの考えている。特に出だしの部分。“Up To Me” ディランが本領を発揮する。これがもしドキュメンタリーか何かだったらここでナレーターは危険な時期だと試案するだろうか? 偶然にもこの歌詞のように…
Everything went from bad to worse, money never changed a thing

そして夕暮れバンドが到着する。

彼らの演奏は少なかった。

それは、有望で見事な “Simple Twist Of Fate” で始まる。観察者は思うだろう「いったい何が悪かったのか?」2番目のテイク、1分半くらいのところで曲を止めディランは言う「ドラムが1秒遅れてるか何かだ」。ディランが曲の中で追い詰めていたものは3回の試みで(テイク)で消滅した。

彼らは次に “Call Letter Blues” と “Meet Me In The Morning” を演奏した。ここでのポイントはディランはベースのトニー・ブラウンだけに “Idiot Wind” を教えた。“Idiot Wind” は初日のセッションから5テイク収録された(全て不完全)。そして初日はトニー・ブラウンと二人だけの “Tangled Up In Blue [Take 1]” で終了した。

2日目、ディランはトニー・ブラウンと “You’re A Big Girl Now” を再考する。テイク3のあとディランは「入り込めない(I can’t get into it)」と言ってる。

この二人のペアに "Bringing It All Back Home" と "Highway 61 Revisited" にも参加したキーボードのポール・グリフィンが加わった。グリフィンは “Tangled Up In Blue [Take 2]” をキープしようと努力したが、ほどなく彼らは “Spanish Is The Loving Tongue” に移行した。不完全な形で投入されたこの曲だが、グリフィンがうまくやってるように見える。続く “Call Letter Blues” と “Shelter From The Storm [Take 1]” のリハーサルテイクでも彼は活気あるプレイを聞かせている。

しかし遥かに上手くいってるのは、グリフィンがいなくなってから録音された素晴らしいファーストテイクの“Buckets Of Rain” だった。2日目の終わりにはディランとブラウンの2人のペアはついに力強くドラマティックな “You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go [Take 2, Remake 2]” を演奏した。

最初の2日間は沢山の仕事をしたが、9月18日は比較的穏やかだった。ブラウンが休んでいる間ディランとラモーンは、4つのヴァージョンの “Buckets Of Rain” に午後を費やした。

9月19日、ディランとブラウンは再びフル稼働している。彼らはこの日、9曲に取り組んだ。そして “Meet Me In The Morning” のテイク2とテイク3の間でディランは、スタジオに来ていた客から頼みもしていない助言を受ける事になる。

隣のスタジオに来ていたミック・ジャガーが立ち寄ったのだ。
トークバックでディランに「スライド(ギター)を付け加えたら」と提案したのだ。
「誰が弾けるんだい」ディランはいたずらっぽく答えた。
「YOU」とミックは言った。
「いや、スライドは弾きたくない」とディランは返した。
「サウンドは良くなるよ」ミックは付け加えた。
「それは考えないでくれ」と、ディランは自分のパートをわざとめちゃくちゃにした(弾いた)。
「OK、わかった。賛成だ」ミックは笑った。

これらの曲は数ヶ月後、ミネアポリスでさらなる変化を遂げる…


*ミック・ジャガーはラジオの放送用に使用するストーンズのライヴテープのミックスのためにスタジオに来ていた。彼は17日と18日、ディランのレコーディングを覗いたようだ。

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たしかに不思議だったのは、どう考えてもディラン一人で演奏していることだった。それが今回ようやくわかった。バンドは途中から参加するのだ。CDは時系列収録されているようでディスク1は、ほとんどディラン一人の演奏となっている。ボナーによれば、CD1の10曲目あたりでバンドが到着したようだ。

CD1
01 If You See Her, Say Hello (Take 1) – solo
02 If You See Her, Say Hello (Take 2) – solo
03 You’re a Big Girl Now (Take 1) – solo
04 You’re a Big Girl Now (Take 2) – solo
05 Simple Twist of Fate (Take 1) – solo
06 Simple Twist of Fate (Take 2) – solo
07 You’re a Big Girl Now (Take 3) – solo
08 Up to Me (Rehearsal) – solo
09 Up to Me (Take 1) – solo
10 Lily, Rosemary and the Jack of Hearts (Take 1) – solo
11 Lily, Rosemary and the Jack of Hearts (Take 2) – solo

そしてCD2からバンドが参加した録音が収録されている。

CD2
01 Simple Twist of Fate (Take 1A) – with band
02 Simple Twist of Fate (Take 2A) – with band
03 Simple Twist of Fate (Take 3A) – with band
04 Call Letter Blues (Take 1) – with band
05 Meet Me in the Morning (Take 1) – with band
06 Call Letter Blues (Take 2) – with band
07 Idiot Wind (Take 1) – with bass
08 Idiot Wind (Take 1, Remake) – with bass
09 Idiot Wind (Take 3 with insert) – with bass
10 Idiot Wind (Take 5) – with bass
11 Idiot Wind (Take 6) – with bass
12 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 1) – with band
13 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 2) – with band
14 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 3) – with band
15 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 4) – with bass
16 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 5) – with band
17 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 6) – with band
18 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 6, Remake) – with band
19 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 7) – with band
20 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 8) – with band

初日の録音CD3の1曲目Tangled Up in Blue (Take 1)で終了するが、かなりな量を録音しているのがわかる。CD3の2曲目から主にベースのブラウンとレコーディングを行う。

CD3
01 Tangled Up in Blue (Take 1) – with bass
02 You’re a Big Girl Now (Take 1, Remake) – with bass and organ
03 You’re a Big Girl Now (Take 2, Remake) – with bass, organ, and steel guitar
04 Tangled Up in Blue (Rehearsal) – with bass and organ
05 Tangled Up in Blue (Take 2, Remake) – with bass and organ
06 Spanish Is the Loving Tongue (Take 1) – with bass and piano
07 Call Letter Blues (Rehearsal) – with bass and piano
08 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go (Take 1) – with bass and piano
09 Shelter from the Storm (Take 1) – with bass and piano
10 Buckets of Rain (Take 1) – with bass
11 Tangled Up in Blue (Take 3, Remake) – with bass
12 Buckets of Rain (Take 2) – with bass
13 Shelter from the Storm (Take 2) – with bass
14 Shelter from the Storm (Take 3) – with bass
15 Shelter from the Storm (Take 4) – with bass



ここからはプロデューサーのスティーブ・バーコウィッツ(Steve Berkowitz)の話だ。バーコウィッツはブートレグ・シリーズのジェフ・ローゼンとの共同プロデューサーでSONY/Llegacyのシニア・ヴァイス・プレジデントだ。



Steve Berkowitz
59th Annual GRAMMY Awards (2016)
・Best Compilation Soundtrack For Visual Media -
    Miles Ahead
・Best Historical Album -
   The Cutting Edge 1965-1966: The Bootleg Series, Vol.12 (Collector's Edition)

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私たちは2015年ごろからテープのリサーチを始めました。テープの状態は非常に良かったです。マルチトラックテープのほとんどのパートは、1974年のオリジナルミックスから触られていません。

なのでほとんどの話題がそこにあるので、必然的にニューヨークテープの話しになるでしょう。ミネアポリスのセッションからは5曲、それはレコードに収録されたものでそれらのマルチトラックテープを利用しました。今回のセットは fromThe Cutting Edge とは全く異なる物を見せてくれるでしょう。何かのテイク1を聞いたとき、それが終わるかどうかではなく、録音が進むにつれて開発・発展していることがわかると思います。或いは、あなたは、1、2、3、8、12、15 テイクなどのStuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Againを聞けますが、彼(ディラン)はテイク18辺りで感触をつかみ始めそれがリリースされたりします。しかし今回の1974年9月16日は、曲を書き終えた状態で彼はレコーディングに入りました。本当に素晴らしいです。

Blood On The Tracksは16トラック/2インチのアナログテープに録音されました。初日の最初の曲は If You See Her, Say Helloでした。ギターに2本、ヴォーカルに1本のマイクを使用しました。それは、昼の12時か1時ごろです。11か12テイク、ボブ一人でやったあとLily, Rosemary And The Jack Of Heartsの中断の際バンドがやってきました。20テイクあります。時系列で収録しています。1日で32テイク録るのには、かなりスタミナが必要です。次の2日間はベース・プレイヤーのトニー・ブラウンとキーボードのポール・グリフィンがいます。ディランさんがスタジオで注目している驚くべきことがあります。それはボブ・ディランが決して『*オン』では無いように見えます。これはすべてのテイクで重要です。
*オン…マイクに近づいて録音すること。その逆は「オフ」つまりディランはオフで録音していた

通常レコーディングではマルチトラックのレコーダーと並行して1/4インチのモノラルテープを常に走らせます(*恐らくバックアップのランスルー録音)。私たちはその両方のテープを聞いてマルチトラックに録音されていないものがモノラルテープに録音されている事に気が付きました。CD2の7、8、13、14、15、16のモノラル録音です。これらはマルチトラックにはありません。他にも興味深いヴァージョンがモノラルにはあります。ディランは2、3箇所で「Let’s do it again」と言って、マルチトラックのテープを巻き戻している音が聞こえます。マルチトラックのリールに録音されていないわけです。

CD5 トラック 1 [‘Tangled Up In Blue’ (Rehearsal And Take1, Remake2)] を綿密に聞けば、沢山の『ボタン(がギターに当たる音)』が聞こえるでしょう。CD1トラック7 [‘You’re A Big Girl Now’ (Take3)] からはもっと「きれいな」ボタンの音が聞こえてきます。どうやらディランさんはロングスリーブのシャツのボタンを止めて無かったようです。ボタンはパーカッシヴな音を作り出していますが、これはボタンがギターのボディーに当たっている音です。ほとんどがギターとヴォーカルでやっているので、彼がアップストロークで演奏するとボタンの音が聞こえます。リアルで忠実な良いレコーディングです。



ディランさんはこのボックスをMore Blood, More Tracksと名付けました。このボックスのために再びこの録音を提示する際ジェフ・ローゼンと私は、ディランのヴォーカルと歌がアルバムで聞くよりさらに親密に聞こえるように作りたかったのです。聞く人が同じ部屋にいるような。デラックスセットはオリジナルレコーディングのバックステージにいるように感じるでしょう。それは生きた歴史です。興奮します。

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以前からかなり気になっていたあのボタンが当たる音、 まさかバーコウィッツがリアルで素晴らしいなんて言うとは思いもしなかった(笑)。こういうノイズはこの時に限ったものではなくそれ以前からあり、そして今だにある。

よくディランは80年代、急速に過去のひとになったと言われるが、実は70年代の半ばで既に過去の人になったいた。ジャクスン・ブラウンや、スプリングティーンなど第2のディランと呼ばれた人達によって…

ニューヨークのA&RスタジオはもとはコロンビアのスタジオAだったところであり、ここは、62年のディランのファーストアルバムから65年ハイウエイ61を録音したいわばディランのホームグランドというべきスタジオだ。

ここに「帰ってきた」ディランは何を思ったのか…

僕はこのアルバムの独特なアンビエント感…それは冬の寒さのような音空間がとても心地よく感じるのだ…その心地よさが親密感に繋がる…そしてこの事こそがオンでは無くオフで録音した効果であり理由なのかもしれない。

久々にブログを書くと何かと大変だ(笑)。いつも以上に散漫になってしまい申し訳ない。あとアシスタントエンジニアのインやビューなどもあるのでそれも何とかしたいと思っているのだけど…(笑)

あとこちらのエントリーに、亡くなったフィル・ラモーンが書いた当時のエピソードがある英語のままだが良かったら見てみてくれ 。またSACD版を作ったとき、彼も『親密』を意識していたことがわかる。

We lost ....







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