昨年からの中国公演に関する一連の出来事に関してボブ・ディラン本人が公式ホームページでコメントを出した。日本のソニー・ミュージックにその翻訳が出ているので勝手にコピペさせて貰う。
5月13日、わたしのファンとわたしの音楽を聴いてくれる人たちへ。
一年前からさまざまなことが言われてきた中国の公演について、ここでいくつかの点を明確にしておきたい。まず、中国政府が公演を許可しなかったという事実はない。中国政府による公演禁止の話は、一年前、日本と韓国の公演のあとわたしを中国に招聘しようとしていた中国側のプロモーターが捏造したものだ。このプロモーターは、わたしたちが何の合意もしないうちに、チケットを印刷したり、一部の人たちにわたしの中国公演を約束したりしていたものと思われる。当時、こちらとしては中国公演をする気はまったくなく、この話がつぶれたとき、中国側のプロモーターは自分の面子を立てるため、中国政府がわたしの演奏を禁止しているという発表をして難局を逃れるしかなかったのだろう。あのとき公式な問い合わせをするという手間をかけてくれる人がいたなら、中国当局はいっさいを関知していなかったことが明らかになっていたはずだ。
今年、わたしたちは別のプロモーターのもとで中国公演をおこなった。『モージョー』誌は、コンサートに来たのはほとんどが中国に住んでいる外国人で、空席も多かったと報じた。それは事実でない。実際にコンサートに行った人にあたってみれば、そこにいたのはほとんどが中国の若い人々であったとわかるだろう。中国在住の外国人は少なかった。そういう人たちは、北京でなく香港に多かった。北京では1万3千席のうち1万2千席が売れ、残りは施設の子供たちに配られた。ただし中国のメディアは、わたしを60年代の生きた象徴と書き立てて、さまざまなところでわたしの写真をジョーン・バエズやチェ・ゲバラやジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグと並べた。コンサートに来たのは、おそらくそうした名前を知りもしない若い人たちだった。そして彼らは、わたしの最近の4、5枚のアルバムからの歌に熱狂的に反応した。実際にその場にいた人に訊けばわかる。とても若い人たちで、わたしの昔の歌など知るはずもないのだと感じた。
検閲については、中国政府は事前に、コンサートで演奏予定の曲名を訊いてきた。きちんと答えることなどできるはずもないので、こちらは過去3カ月のセットリストを提出した。たとえ検閲がおこなわれたとしても、禁止された曲や歌詞の一部があったとしても、わたしは何も聞かされず、コンサートでは演奏しようと思った曲はすべて演奏した。
周知のように、わたしについて書かれた本が大量に存在するし、これからも数多くの本が出版されるようだ。だから、わたしに会ったことがある人、わたしの声を聞いたことがある人、わたしの姿を見かけたことがあるだけの人でもいい、そうした人たち全員に自分で本を書くように呼びかけたい。そのなかからすばらしい本が生まれる可能性もある。
文中でディランは「あのとき公式の問い合せをしてくれる人がいたなら....」と言っているがそれは実際に行われている。中国外交部の定例記者会見で質問されている。
→中国の言分(Update 04/10)
ただ本来この質問は外交部ではなく文化部にされるべきものだ(実際に公演の許可を出すのは文化部だから)。なので外交部の姜瑜(きょうゆ)報道官は「それは外交に関する問題では無いので関係機関に質問してくれ」みたいな事を言っている。まぁディランが望むような問い合せは残念ながら無かったのかもしれない(中国国内のメディアは問い合せたかもしれないが)....。
それにしても、まさかディラン本人がこのようなコメントを出す事は一生無いと誰しもが思っていただろう。そんなめったにしない珍しい事をするから逆に変だとか言われるところがおかしい(笑)。つくづく信用されて無いのかボブ・ディランは。まぁ身から出た錆だな......。
ただ1ヶ所だけ気になるところがある。それは昨年ディランの中国公演を捏造したのは台湾のプロモーター(ブロカーズ・ブラザーズ)のはず。それをあえて「中国の」と言うのは中国にたいするこれ以上の配慮は無い。
ブロカーズ・ブラザーズが大陸側のプロモーターに売っていたのかも知れないが、それならばそう言うだろう。
ディラン自身はそれが台湾のプロモーターと知らず中国のプロモーターときかされていたのだろうか.....
巷では色々言われているが、今回のコメントで個人的にはかなりすっきりした。
2 コメント
twitterにも書いたんですが
可能性 1:ライヴ後の検閲報道云々で、中国政府がご機嫌を損ねた。
可能性 2:今年はまだ受持っていない Live Nationとかから「今後も普段の興行ができるのか?」と疑われた。
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“If anybody wants to check with any of the concert-goers they will see that it was mostly Chinese young people that came.”
「自分自身で調べて確かめろ」
これはBob口調とみて ほぼ間違いありません。
ただ、Bobらしからぬ言い訳文+bobdylan.comに本人が登場するのは 前例がありません。
Bob側が何か 余程追い詰められた状況に立たされてる気がしてならないのです… 思い過ごしであれば良いのですが。
また、今回の中国公演でディランに何らかの落度のようなものがあったかといえば全くない。ただ機嫌良く演奏して帰っていただけです。検閲問題にしても言出したのはメディアですし、ディランには一切の非はありません。
ただそうした正論が通じる相手では無いという事もわかります。
McFitzson さんの懸念もすごくわかります。
「コンサートに来たのは在中国の外国人で空席が多かった」という記事に対してディランは反論していますが、これなども本来はディランが言うべき問題ではありません。コンサートにどのような人が来ようが、空席があろうがディランには計り知れぬ事です。通常ならば主催者が言うべき事をディランが代弁している。
公演許可と検閲の件は中国政府を代弁している。
ただ、本当に代弁なのか或は自発的なものなのかはわかりません。
ディランが何らかの圧力を受けて「代弁」せざるを得なかったとして、もしそれを拒否して「代弁」をしなかったらどうなったでしょう。
拒否した対抗措置として冒頭で書いた事を彼らが実行する事くらいだと思うのです。
そう言う意味では楽観的に見ています。
明確な根拠はありませんが、今回の件で中国政府からの圧力は無かったと思います。
政府では無くプロモーターが何か言った可能性はあると思います。「今後、中国で公演を続けて行いたいのであれば、何か説明しておいたほうが良い」といった事をディラン側に伝えそれをディランが実行したみたいな事です。あることないことで話しを大げさにしてディランが書かざるを得ない状況に追込まれた......これはプロモーターの中国政府に対するゴマスリのためにディランが利用されたという見方です。まぁプロモーターがディランを説得出来るのか大いに疑問がありますが.....。
書きたくない物を無理に書いた感は否めないですが、本人が望んで書いたものだと思っています。
McFitzson さん、コメントありがとうございました