
ソニーのマスターテープ、3000~4000本がたったの50ドルで売られた話
そのテープ群は、ナッシュビルのコロンビア・スタジオで1940年代後半から70年代初頭に録音された物だった。数多くのアウトテイク、セッションを含む総曲数20,000~40,000。約500アーティスト、3000~4000本のマスターテープ。その中にはロイ・オービソン、フランク・シナトラ、デューク・エリントン、ルイ・アームストロング、そしてエルヴィス・プレスリー、ボブ・ディランなどの曲が含まれていた。
これらのテープは、ブランク・テープ(再利用するためのテープ。つまり、消去して新たに録音するためのテープ)としてそのスタジオのエンジニアが自分で購入したものだった。つまりコロンビアの従業員がスクラップテープとして社内で払い下げらたものを購入していたのだ。
彼は倉庫を借りてテープを保管してたのだが、家賃が払えなくなり、その倉庫の中身…4000本のテープが公売にかけられてしまった。そして倉庫の大家だったコール夫妻がたったの50ドルでそのテープを落札した。
コール夫妻はそのテープの価値が全くわからなかったが、テープを買った2年後の1992年、ニュージャージーのちんけなレコード会社に連絡をとった。そしてやって来たクラーク・エンスリン (
Clark Enslin) に合い、そのテープの価値に初めて気がついた。
エンスリンはそのテープに6,000ドルを払うと言った。
エンスリンがテープを手に入れた事はすぐにソニーレコードの知る事となる。ソニーはエンスリンが違法にテープを入手したとして彼を訴た。裁判所はすぐさまエンスリンにテープを隠したり、販売することを禁止する命令を発行した。
翌1993年、裁判所は物理的な所有権はエンスリンにあるが、曲の販売の権利は無いという判決を出した。彼はソニーの許可が無い限りいかなる曲も販売することが出来なくなった。
その後、所有権を巡り裁判は続いた。エンスリンはメジャーレーヴェルからの好条件のリクルートの誘いも蹴って、自分のレコード会社を設立、持ってるレアな資産を5,000万ドル~200,000万ドルで提供するという作戦に出た。
1995年、ソニーはテープの所有権を主張することを諦め、両者は作品の公表の方法について協議を始めた。恐らくエンスリンがテープを貸し出すという形でレンタル料を得るという事なのだろうが、今現在その詳しい内容はわからない。
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'LOST WAREHOUSE TAPES' OWNERSHIP ISSUES RESOLVED
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