もしあなたが、偶然ボブ・ディランと出会い幸運にも1枚の写真を撮ることが出来たらその写真をどうするだろうか。1972年の夏、学生だったSue Kawalerskiはそのような幸運にめぐりあった。
1972年、夏。この年の
マリポサ・フォーク・フェスティバルはまさにカオスだった。
この年は、6つのステージを同時進行させた初めての年だった。おまけにニール・ヤング、ジョニ・ミッチェルとボブ・ディランなどのビッグネームが現れるという噂が立ち。あるステージで大歓声があがると他の5つの観客が大歓声の上がったステージにビッグネームの誰かが現れたと思い大移動を開始した。
そんな感じだから人の海と波は止る事が無かった。恐らく多くの人達はそんな中でもコンサートを楽しんだだろうが、私は少しうんざりしてきたので、熱狂的な観衆とは別のほうへふらふらと歩いて行った。
しばらく歩いていると、フェスティバルの音もほとんど聞えない水辺のほとりに辿り着いた。私はここでカモの写真を撮ろうと思った。カメラは兄弟がくれたものだ。アメリカ陸軍としてドイツに配置されたときに手に入れたものらしい。ゾルキというロシア製、レンジファインダーのカメラだ。今のデジタル・カメラなどと比べるととても扱いにくいカメラだ。ファインダーを覗いて見える2つの像をレンズを回して一つに重ねる事も知らなかった。
どれほどの時間が経過したかは憶えていないが、私は背後に誰かが近づいてくる気配を感じた。確かめるためにファインダーから目を外し後ろをふり返った。
私は直ぐに向き直ってまたカモの写真を撮り始めた。しかし顔はしっかり確認していた。ボブ・ディランだった。その時、何故クールでいれたかは私自身もわからない。
そしてその男、つまりボブ・ディランは私の隣に腰を下ろし「何をやってるんだい」と尋ねてきた。
まぁ見りゃわかるだろうと内心思ったが「カモの写真を撮っている」と答えた。
ディランは「どんなカメラを使っているのか」と言ったので「ロシア製のゾルキ」だと答えた。
そして「何故、音楽を聞かないのか」と尋ねてきたので「みんなは音楽を聞かずステージの移動ばかりやっている、そのことにうんざりした。みんな走ってる、あなたが現れたと思ってね」と答えた。
彼は何も言わなかった。彼は立上がり向うへ歩き始めた。 私は呆然としていたが、カメラを持っている事を思いだし彼の写真を撮らなければと思った。
そして起きあがって急いで彼の後を追った。その時彼はバリケードフェンスの直ぐ手前まできていた。
私は言った「すみませんディランさん。もしよろしければ写真を撮らせていただけませんか」
彼は向きを変えて「Yes.....」と言った。その「はい」は「私の写真を撮るな」と言ってるようにも聞えた。私は言った「ああ、お願いだ私の孫子のためにも…」
ディランは一言も話さず、こちら側を向き微笑みながら立ってくれた。 わたしはすかさずシャッターをきった。
彼はまたぐるりと向きを変えて群衆のほうへ向った。 私は「ありがとう」と言った。 私はそこで今、起きた事を思いその場に棒立ちになった。
写真は特設サイトで購入可能だ。解像度72dpiならばダウンロード販売で $9.99だ。
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The Bob Dylan Photo
Bob Dylan shows up unannounced at a Gordon Lightfoot performance at the Mariposa Folk Festival on Toronto Island in 1972
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