We’re trying to get him back in


ヤン・ウェナーを戻せ!

1967年、ラルフ・J・グリースンと共にローリング・ストーン誌を創刊したヤン・ウェナーは、2019年にRS誌を退社しその後RS誌に関連する本を2冊出版した。

一冊目は昨年出版された『Like a Rolling Stone』と題され本。自身の回顧録であるのと同時に2017年に出版された、ジョー・ヘイゲンの『Sticky Fingers: The Life and Times of Jann Wenner and Rolling Stone Magazine 』に対する強烈なアンチテーゼでもありベストセラーとなった。

もう一冊は今年9月、ウェナーが過去にRS誌で行ったディランやミック・ジャガー、ボノなど7人のインタビューにブルース・スプリングスティーンの新たなインタビューを加えたインタヴュー集『The Masters』。



本の出版に併せて彼はニューヨーク・タイムズ誌のインタビューを受けた。
Jann Wenner Defends His Legacy, and His Generation’s (N.Y.T.)


そのインタビューでのヤン・ウェナーの発言が大問題になった。

NYT:…新しい本には7つのサブジェクトがあります(7人の白人男性)。あなたは序文の中で有色人種や女性のパフォーマーがあなたのツァイトガイスト(zeitgeist:spirit of the age:時代精神)にそぐわないと書かれていますね。私の考えでは、ヤン・ウェナーにとってこれはあり得ないことです。ジャニス・ジョプリン、ジョニ・ミッチェル、スティービー・ニックス、スティービー・ワンダー、何人でもいますが…これらの人たちもそうぐわないのですか? なぜその人たちにインタビューせず表題の7人にインタビューしたのか、詳しく聞かせてほしいのですが

ウェナー:まぁちょっと言わせてください。

NYT:キャロル・キング、マドンナ、例は山ほどあります。

ウェナー:私がツァイトガイストについて言及したのは、女性パフォーマーに対してではなく、黒人パフォーマーについて言及していました。OK?。正確を期するために言っておきます。この選択は意図的なものではありません。長年の直感のようなものです。誰かに会うには幾つかの基準がありますが、それは私の個人的な興味と彼らへの愛情でした。女性に関して言えばこの理知的レヴェルを満たす人は誰もいませんでした。

NYT:やめてくださいよ。ジョニ・ミッチェルは理知的レヴェルを満たしていないのですか?

ウェナー:ちょっと待って。

NYT:うーん、言い換えると…

ウェナー:わかりました。ありがとう。彼らがクリエイティブの天才ではないということではありません。彼らが歯切れが悪い訳でもありません、とはいえ、私のゲストになったつもりで、グレース・スリックやジャニス・ジョプリンとの深遠な会話を考えてみましょう。ご存知のように、ジョニはロックンロールの哲学者ではありません。私の考えでは、彼女はそのテストを満たしていませんでした。彼女の仕事によってではなく、彼女が行った他のインタビューによってでもありません。私がインタビューした人たちは、ロックの哲学者みたいな人たちでした。

黒人アーティストの中で、スティービー・ワンダーは天才ですよね?あなたが『masters』と言う言葉を広い意味で使うのは間違いだと思います。マービン・ゲイやカーティス・メイフィールドもそうでしょうか? つまり、彼らがそのレヴェルにおいて明確ではありませんでした。

NYT:あなたが彼らにチャンスを与えなかったかどうかをどうやって知ることができますか?

ウェナー:彼らのインタビューを読んだからです。そして彼らの音楽も聴きます。つまり、ピート・タウンゼントやジャガー、あるいは他の誰かが書いていたものを見てください。それらは、特定の世代、特定の精神、ロックンロールに対する特定の姿勢についての深いものでした。他の人たちがそうでなかったわけではありませんが、これらはそれを本当に明確に表現できた人たちでした。

The Masters 序文から



このインタビューは9月15日に公開されたが、翌日の16日には、ロックンロールの殿堂財団(Rock & Roll Hall of Fame Foundation)は彼をメンバー(ディレクター)から除外すると声明が出された。財団は1983年にアーメット・アーティガンによって設立されたがそのメンバーには、ヤン・ウェナーも含まれていた。

財団は、彼に釈明の場を与えたが利己的でかつ不十分であると判断され、すぐさま、幹部による電話での緊急会議が開かれ最終的に投票で除外される事が決定した。反対者は一人いたがでそれは、マイケル・ランダウだと言われている。

同じ16日、財団の発言から数時間後の夜、ウェナーの全面的な謝罪がハリウッド・レポーターに掲載されたが、すでに遅かった…

Jann Wenner Apologizes for Saying Black and Female Musicians Aren’t “Articulate” Enough for His New Book (The Hollywood Reporter)


この謝罪にリビング・カラーが反応した


Bob Dylan and Wenner in 1995. Anton Corbijn


さて現在ワールドツアー中のディラン、11月16日、ニューヨーク、ビーコンシアターでの公演中でこの件について言及したことが大きな話題になっている。

All right, like to say hello to Jann Wenner who’s in the house. Jann Wenner, surely everybody’s heard of him.

Anyway, he just got booted out of the Rock n Roll Hall of Fame – and we don’t think that’s right, we’re trying to get him back in.


家にいるヤン・ウェナーにハローと言いたいところだ、ヤン・ウェナー、きっとみんなも知ってるだろう。ロックの殿堂から追い出されたところだ…で、我々は、それは正しくないと思っているし彼を復帰させようとしてるんだよ


Jann Wenner Pled His Case During Rock Hall of Fame Emergency Meeting Before Board Voted Him Out (billboard)

Living Colour Blast Jann Wenner’s All-White ‘Masters’ Book and Apology: ‘Smacks of Sexist Gatekeeping and Exclusionary Behavior’  (billboard)


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