ラリー・チャールズとディラン
アメリカのコメディアン、ピート・ホルムズのポッドキャスト"
You Made It Weird with Pete Holmes"にラリー・チャールズ(
Masked and Anonymousの監督)が出演した。ポッドキャストの中でディランとのエピソードを語っている。
ディランが「ジェリー・ルイス」にはまり、自分もドタバタ喜劇に俄然出演したいと思うようになる。それだけでなく、それを
HBOでTVシリーズ化したいと考えチャールズに連絡をしてきたという。チャールズはディランとのことを「とても夢のような出来事」だったと言い、ディランとのミーティングから話し始める…
チャールズ:サンタモニカの彼のボクシングジムの中にある仕切られた部屋でディランと会ったんだ。彼はチェインスモークで…もうずっと…完璧に煙が充満していた。アシスタントが来て「何か飲むか」と言うので「ああ、アイスコーヒー」と答えた。ボブは「何か暖かいもの」と言った。彼は何故暖かい物がほしいかをとても装飾的に話した。しばらくしてアシスタントがボブのカプチーノか何か暖かいコーヒーと私のアイスコーヒーを持ってきてテーブルの中央に一緒に置いたんだ。そのとたんボブが私のアイスコーヒーを掴んで飲み始めたんだ。私は、彼が飲むのを見てた。もう一つのは、ほしくなかったので触らなかった。彼がほとんど飲み終えようとした時「君の飲み物を飲まないのか」て言ってきた。それはまるで「君は私のを飲んでる」って聞こえた。彼はちょっと笑って…緊張がほぐれるのに十分だった。相手の飲み物を飲んで反応をみるなんて、まるで魔術師に会うためのテストのようなものだ。
ミーティングが進み、チャールズは魅力的でユニークなディランのライティングに気づく
チャールズ:彼はまるで魔術師が持ってるようなどぎつく飾り立てた凄い箱を取り出して、箱を開けて中に入ってるメモをテーブルにぶちまけた…それは、ノルウェー、ベルギー、ブラジルなどのホテルのステーショナリーのメモだった。メモには何かのくだりや名前が走り書きされていた。'Uncle Sweetheart'とか、あるいは奇妙な詩の一節、何かのアイデア…それは「これをどう使うべきかわからない」と言ってるようだったし、別の理由から「これが台詞でこれがキャラクター、そしてこの台詞をこのキャラクターがしゃべる。君が選べる」とも思えた。そして彼が言った「出来るか?」それは「そう、そう、君は出来る」と言ってるようだった。私は彼が曲を書くときもこうやって言葉を繋いでいるのだと気づいた。だからそう感じたんだ。
全て彼のアイデアだ…ある種の潜在意識あるいは無意識のうちに一貫性のあるものとして統合させている。それは結局のところ我々がどうやって書いたかを示している。まさにカット・アップのテクニックを使って書いた。メモを取ってそれらを繋いだ、つじつまが合うように、そこから話のポイント探し続け、そしてついに…シュールで彼の歌を詰め込んだ複雑な処理を施したスラップスティック・コメディ、(どたばた喜劇)を書き上げた。それでボブに言ったんだ「HBOに一緒に行ってくれたらこのプロジェクトを彼らに売るよ。彼らはあなたを目の前にして嫌だとは言えないだろうから」て、彼は同意してくれた。
で、彼はミーティングに姿を現した…話は変わるけど、そのとき私はどこでもパジャマだけを着ていたんだ。
Mad About You(
あなたにムチュー)を2年間やってパジャマを着始めたんだ、どこでも、子供と行事に出かけるときでもパジャマで…軽いノイローゼになっていたんだろうけど気づいていなかったんだ。で、どこでもパジャマのままだった。だからミーティングもパジャマだったんだ。一方ボブは黒いカウボーイハット、引きづりそうな黒いコート、黒いブーツ…まるで西部劇のガンマン…キャット・バルーみたいな出で立ちでHBOに現れた。私たちはHBOのホールを歩いていた。その場面を想像出来るだろうか、私の髪はスーパーロング、へそまで届く顎髭にクソパジャマ。ボブ・ディランは映画に出てきそうなカウボーイ姿。HBOの社長クリス・アルブレクト(
Chris Albrecht)とミーティングに入った。アルブレクトはボブに「ボブ、あなたに会えて、とても光栄だ。私が持ってるオリジナルのウッドストックのチケットです」と言ってボブにチケットを見せた。ボブは「ウッドストックで演奏していない」と答えた。その後ボブは、町を見渡せる窓側に移動し、私たちに背を向け始めた。
彼は決して振り返らなかった。私はこの状況で始めなければならない。これが彼だ。一緒に居た私のマネージャ、ギャビン・ポロン(
Gavin Polone)が「大人げない、子供のようだ(
retarded child)」と耳元でささやいた。私は「ボブはやるつもりだ。そうですよねボブ?」と言って始めた。彼らはこんな不愉快な状況にもかかわらず、最終的にこのプロジェクトを買ったんだ、実際の話。
彼らはプロジェクトを買った。ボブのマネージャ ジェフ、私のマネージャ ギャビン、そしてボブと私は部屋を出てエレヴェータに乗った。売れたことで3人は得意になっていた。そしてボブが言った「これ以上なにもしたくない」それはとてもスラップスティッキーだった。彼はそのような事に関心が無かった。どたばたはこれでおしまいだった。彼はこれ以上興味が無かった。ギャビンが「降りるべき」だと言った。私は「ボブ・ディランの列車に乗るよ。列車が行くどこへでも」と答えた。私たちは、ちょっとシリアスな映画に書き直した。そして撮影を始めるまでもう1年かかった。
結局のところこれが
Masked and Anonymousになった。
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HBO Producer Reveals The Crazy Story Of When Bob Dylan Tried To Make A TV Show (Business Insider)
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相変わらずのディランでアレなのだが、HBOの社長がお約束をやらかしてくれておかしい。あと、ディランが
カットアップを明確に使ってる事がわかって驚いた。
(これに繋がる→
Chronicles)
現代音楽に
チャンスオペレーションという手法がある。その中にあらかじめ何か録音したテープを切り刻んでテーブルにばらまき、そこから適当に選んでテープを繋ぎ作品にするという古典的なやりかたがある。これなんかもカットアップと言うべきかもしれない。
ディランは繋いだ言葉に整合性を持たせる事が出来るようだ…それは裏を返せばその言葉に意味などなにも無いということなのだが…というのも不正確だな、結局のところ個人によってその意味は違ってくる、何をどう感じようとその人の自由だからだ。ただ…ただ単にカットアップだけならこんな箱を持ち歩く必要は無いんだよ。だからチャールズは潜在的か無意識か知らないが繋がってるって…そこがミソだな(笑)。
話は変わるけど、
ボラットは面白かったな、最初監督がラリー・チャールズだって知らなかった。
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