NHKの人気番組に「鶴瓶の家族に乾杯」という番組がある。見知らぬ土地に出向き、様々な人や家族に出会う番組だ。何の前ぶれも無く突然、鶴瓶や有名人に出会ってしまう様子が面白い。「ごめんください」と玄関から声がしてドアを開けるとそこに鶴瓶がいるのだ。誰もが驚いてしまうだろう。
車で食料品を買込み、家に帰ってきたら、玄関先にボブ・ディランがうろうろしていた…そんな非現実な事が起った。ツアーでカナダを訪れたディランが、若きニール・ヤングが暮していた家を訪ねてやってきたのだった。
カナダのウィニペグ市に住む市の職員ジョン・キアーナンさん(53歳)は、60年代にニール・ヤングが住んでいた家に現在暮している。
「彼は品のいい感じだった。そして素晴しい思い出になった」
伝説的シンガーソングライターと25分ほど立話をしたキアーナンさんは、その時のことを振返って語った。
昨年の11月2日ウィニペグMTSセンターで行われたディランのコンサート当日、買物を済ませ家に戻ってきたキアーナンとレーガンは、タクシーでやって来た薄汚い感じの男2人が、自宅の玄関先にいるのを見つけた。午後の4時か4時半ごろだった。
「おや、おや、こりゃまたニール・ヤングのファンか…」
6年間この2世帯住宅に暮すパティ・レーガンにとって、なれっこの光景だった。彼女は話しをしに男のところへ向った。キアーナンは食料品を家に押込んでから少し遅れてやって来た。
キアーナンは、彼らがいつものニール・ヤングファンより少し年配に感じていた。
皮のパンツの裾を高そうなカウボーイブーツに入れてるその男を見たとき、はっと気づいた。そしてちらっと顔を見て確認した。髭をそっていない顔、しわ、グレーの髪、間違いない、彼はディランだ。
キアーナンは努めて冷静に対応したが、レーガンはまだ気が付いていなかった。
ディランは天候の話しをはじめた。
キアーナンは、この季節にしては珍しく穏やかだと答えた。
「ミネソタ(ディランの出身地)はどうですか」とキアーナンは訊ねた。
「(ここの気温から)10度引いたくらい」と言ってディランは笑った。
ディランが熱心だったので、キアーナンは、彼らが家の中も見たいのではないかと思い
「How long do you have for the tour?」と訊いてみた。
ツアーとは勿論、家を見て回る意味で言った。
「もう2週間ツアーをしている」ディランは答えた。
ディランはニール・ヤングと近所の関係について興味を持っていたようだ。
キアーナンはニール・ヤングの古い寝室を見せた。
今は彼の16歳の娘のためにピンクに塗られている。
「ここで、ニールが彼の音楽を聞いていたのか」とディランが感慨をこめて言った。
キアーナンは、アールグレー(中学校)とクレセントウッド・コミュニティーセンターの場所を教えた。そこは10代のニール・ヤングとバンド仲間が初めてライブを行った所だ。
彼は内省的で思いやりがあった。2人を乗せてきたタクシーの運転手は、多分その2人が誰であるかを分ってないだろうとキアーナンは言った。
キアーナンは「ボブ」と呼んだが、ディランはそれを認めなかった。
彼はそうしなくてもよかった。握手も自己紹介もしない男だ。
タクシーが去り、レーガンが言った
「とってもクールに話してけど、どんな凄いセレブだったの?」
「ボブ・ディラン」
「どこか見覚えのある人だとおもっていたわ」レーガンが叫んだ。
そして、熊手で落葉をかき集めてる近所の人達に叫んだ。
「ボブ・ディランがタクシーに乗っている!! ボブ・ディランがタクシーに乗っている!!」
キアーナンは、ディランがここに来た証拠は無いしサインも貰わなかったと言った。
「サインを貰う事が何か俗っぽい感じがした」
それと
「ディランのコンサートチケットを買って無いこともきまりが悪かったし…」
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