Secrets Of The Mix Engineers


アル・シュミット・インタヴュー



アル・シュミット(Al Schmitt)85歳





音楽史の中で最も尊敬されるエンジニア・ミキサー、グラミー賞を21回取り、150以上のゴールド、プラチナアルバムをミックスした。ヘンリー・マンシーニ、サム・クック、ジェファーソン・エアプレイン、バーブラ・ストライサンド、スティーリー・ダン、ジョージ・ベンスン、トト、マイルス・デイビス、ナタリー・コール、ダイアナ・ロス、エルビス・コステロ、ルーサー・ヴァンドロス、ニール・ヤング、ブライアン・ウィルソン、ポール・マッカートニー…その他、数え切れないアーティストのレコードにクレジットされている。

これだけのキャリアを誇るアル・シュミットだが、今までディランと仕事をしたことが無かった。しかしついにジェフ・ローゼンから、彼のロサンゼルスの自宅に電話が入った。

アル・シュミット:残念ながら、その予定日は忙しかったんだ。本当にガッカリした。彼は一緒に仕事したくてたまらないアーティストの一人だったけど、未だに仕事をしたことが無かったんだ。次の日また電話を受けた。ボブが、どうしても私と一緒にやりたいからとスケジュールを変更してくれたんだ。明らかに私の仕事を聴いていた。私が録音したシナトラのDuets [1993] とかをね、それで私が適していると考えたんだろう。






●次のステップは、どこでアルバムを録音するかということだった

アル・シュミット:彼らはスタジオを見て回った。ジェフ(ローゼン)はスタジオBのライヴなところが気に入ったようだ。後からみんなでそこに行った。ボブは「なんていい音がするんだ」と言って「どの位置で歌うのがベストですか?」と訊いた。私のアシスタント、チャンドラー・ハロッド(Chandler Harrod)が「今、立ってるその場所が良いところだと思いますよ」と答えた。彼はそうした。凄いことだ。レコーディングはとても快適だった。私たちは楽しい時間を過ごした。素晴らしかった。


●レコーディングの手順はどの曲も同じだった

アル・シュミット:1日に2~3時間のセッションを2回、週5日それを3週間やった。セッションとセッションの間に夕食を取った。ディランは小さな音楽プレイヤーを持ってきて、毎回セッション前に、今から自分達が録音するシナトラの古い曲をかけけてライヴルームで皆で聴いた。同じアプローチではなく解釈のアイデアを得るためだった。だいたい2時間くらい話し合った。音楽監督のベースプレイヤーがコード表を持ってきて個々のプレイヤーに概略を説明した。正確な演奏のために多くの時間が費やされた。また、みんなが快適でお互いによく音が聞こえる必要があった。特に、ディランが望んでいること、みんなにどのように演奏してほしいかをインプットした。彼はプロデューサーだった。この場を取り仕切った。テンポに言及し、リズムギターの演奏の仕方、ペダルスチールで何を望んでいるかなどを伝えた。

そして、1、2テイク演るとコントロールルームに入ってプレイバックを聴いた。各パートの改善方法のアイデアを出し合った。ディランも自分のヴォーカルを良くできると考えるかもしれなかった。バランスについても話し合い、もう1、2テイクやったりした。時には、とても早いテイクで終えるのもあり調整も無かったが、ほとんどは聞き直してアイデアを出し合った。私はもう少しヴォリュームを上げてほしいとか、少し下げてほしいと微調整をその時頼んだ。ギターソロが少し大きかった。私はフェーダーを動かしたくなかった、自然なままでやりたかった。ヴォーカルのフェーダーは動かしたが、その他に関しては私がいったんセットアップすると、彼らが自分達でバランスをとった。その後は、私がやることはほんの少しも無かった。それで終わった。編集も直しも調整も無い。全てはそのままだ。





●マイクは、適切な位置に適切な方法でセッティングされなくてはならない。しかしディランのマネージャーからの特異な要望によりそれは複雑になった

アル・シュミット:「ボブが周りに沢山のマイクがあるのを見たくないそうだ」とジェフが言ってきた。だからできる限りマイクを少なくし隠した。理由は知らない。多分、リヴィングルームのようなリラックスした雰囲気が欲しかったのだろう。彼とミュージシャンはレコーディングの間、マイクを意識しなかっただろう。ディランは、イヤホンやキューボックスなど今のレコーディングで行われている事を一切やりたがらなかった。それでヘッドフォンを使わなかった。リズムギターが聞こえづらかったのでギタリストをディランに近づけた。ディランの周りでミュージシャンを適切な位置に配置し単純にバランスをとった。



※図は書き直している



●ミュージシャンは半円でセッティングされた。7本のマイクが、56のインプットを持つコンソール、ニーヴ8068に入力された。そして少しのリヴァーブやコンプレッサーがディランのヴォーカルにかけられた。すべてはライヴで24トラックと2トラックのテープに落とされた。2トラックから3曲が全くの無編集でそのままマスターになった。あとの7曲は24トラックのもので、シュミットがレヴェルやバランスの微調整をした。アルバムは、最高に暖かみのある音を目指していた

アル・シュミット:アルバムのサブタイトルを "Secrets Of The Mix Engineers" てつけたよ。だって何のミキシングもしてないからね。バンドのセッティングは実にシンプルだったが、マイクを見えなくするというリクエストのために、私のレコーディングの経験を総動員しなければならなかった。でも、いったんセッティングして最初のプレイバックを聴いたら、それで良かった。ボブは気に入ってた。彼はこの40年間でこんなに上手く聞こえた事は無いと言った。彼は音にノックアウトされ、私たちは録音した音にぞくぞくした。ボブのヴォーカルにはキャピトルのノイマンU47を使った。フランク・シナトラ、ディーン・マーティン、ナットキング・コールが使っていたのと全く同じ物だ。ボブから20cm~25cm離してウインドスクリーンを付けて使用した。ポップノイズや子音系ノイズの問題は無かった。全てのマイクに古いニーヴ1037プリアンプを繋いだ。凄くいい音がする。パンチがあって暖かい。ボブの47もそれを通している。このアルバムで唯一使ったコンプレッサーは、ボブのヴォーカルに少しだけ使った。フェアチャイルドの古いモノラルコンプだ。ほとんど触っていない、チューブサウンドのために使った。音に暖かみを加える。そしてキャピトルのライヴチェンバーの4番をヴォーカルに使っている。






他のマイクは、やはり暖かみが欲しかったので、できる限りリボンマイクを使おうと考えた。凄くいい音がするオーディオ・テクニカのリボンマイクAT4080をアコースティクギターに使った。サウンドホールから90cmほど離してセッティングした。トニーのアップライトベースにはノイマンM149を120cm離して低めにセッティングした。通常、アップライトベースには2本のマイクを使用する。1本はF-ホール、もう1本はフィンガーボードを狙う。今回は多くのマイクを使えないのでF-ホールだけを狙った。ドラマーはほとんどブラシを使い、時たまスティックを使用していた。それと1曲だけティンパニーを使っていた。私は彼にAKG C24(ステレオ)を使用した。エレキギターはAT4080をギターケースの上に置いた。ちょうどギタリストの影になってディランから見えなかった。


AKG C24



スチールギターはヘッドでエコーがかかっていた。それはかかりすぎていると思ったので、ドニーに言って切ってもらい、コントロールルームでエコーをかけた。ペダルスチールとエレキギターには、ブリキャスティーM7(リヴァーブ)を使った。イコライザーは使用しなかった。イコライザーを使用しないレコーディングは、ほとんどまれだ。異なったマイクとセッティングで音をアジャストさせようとした。ミキシングの間も出来るだけ少しのイコライジングもコンプレッサーも使用しないようにした。



Bricasti M7



数日の間だけ、ホーンセクションがレコーディングに参加した。DJ Harperがアレンジを準備していた。彼はディランと事前に打ち合わせをしていた。ほんの少しの変更があった。ホーンプレイヤーはライヴルームの奥のブースに入った。ブースのガラスドアは広く開かれたのでディランはその音を聴くことが出来た。ホーンはバンドの中央に置いた、アンビエント用のノイマンM49でほとんど拾った。ディランの直ぐ側にあるマイクだ。バーブラ・ストライサンドのアルバムで使ったものだ、このマイクはあのアルバムのようなエアリーサウンドを与えてくれる。トロンボーンにはロイヤー122、トランペットにはノイマンU67、フレンチホルンにはノイマンM149をそれぞれ使った。でも、もう1度言うが、ホーンはさっきのM49のルームマイクでほとんど録ったんだ。トロンボーンのソロを聴いたときみんなは「トミー・ドーシーのソロみたいだ!」て言ってたよ。


ちょうど、ピアノのある位置にディラン達もセッティングした


●録音には2台のテープレコーダが使われた。1台は24トラックのステューダーA827(2インチ)、もう1台は2トラックのアンペックスATR(ハーフ・インチ)だ。それぞれ30ips (76cm/s) で回され、同時に録音された。ノイズリダクションは使用していない。同時に、プロツールス(192kHz)も使用されたが、これは純粋にバックアップのためだったとシュミットは言う

アル・シュミット:デジタル192は素晴らしいが、アナログテープは未だに何かをもたらしてくれる。デジタルより少し耳に気持ち良い音を作ってくれる。問題は皆がテープを扱えないという事だ。


奥の部屋にテープレコーダーが見える


●シュミットはミキシングのある方法を勧めたが、ディランには別のアイデアがあった

アル・シュミット:私たちは全ての音を同じ部屋で同じ時に聴いてるようにしたかった。ヴォーカルのフェーダーを上げて、部屋での配置と同じように全ての楽器を定位させた。エレキギターは左、ペダルスチールはその逆、あまり音が大きくないと感じたベースも定位した。セッションの終わり、ファイナルテイクを聴いて、それで終わりだった。ディランは各テイクの良い物を選ぶと直ぐにマスターとしてロックした。私がミキシングに言及したときディランは「いや、このままの音がいい」と言った。最終日は、バランスの取り直しや、細かな修正など基本的な事に費やされた。いくつかの曲では、そのように手を加えた物よりオリジナルのラフヴァージョンをディランは採用した。私たちが改善しようと曲をかけると彼が「オリジナルを聴かせてくれ」と言い、これが良いと言った。ディランは装飾的な物は欲しくなかった。できる限り自然なものが良かった。彼はラフヴァージョンに完全に心を奪われていて、私にもそれにとてもちかい状態のままで音を作ってほしいと望んでいた。いや、本当に昔のレコードの作り方そのままだった。その頃は編集も修正も出来なかったので、様々な事は感覚にたよっていた。そしてテイクはフィーリングで選ばれた。それが多くのレコードがあの当時から人の感情や心の深くに届く理由だ。


●3週間を通し23曲が録音された、アル・シュミットのような生え抜きのエンジニアでさえ、スリリングでマジカルだったと言う。しかし、このプロジェクトのごく初期の頃、計画は上手くいくのか疑心暗鬼だったと打ち明ける

アル・シュミット:始まった当初、私も少し心配した。ディランがこの種の歌を歌えるのか確信が持てなかった。しかし一番最初に彼とバンドの音をスピーカーを通して聴いたときは鳥肌が立った。未だにその最初のテイクの事を覚えている。素晴らしいサウンド、そしてほんとうに感情的だった。その全てに私は驚いた。ボブはこれらの歌を愛していて全身全霊を込めて歌っていた。彼は何がレコーディングされたかを人々が正確に感じて欲しいと思っていた。それゆえにスタジオマジックも修正も調整も編集もしたくなかった。同じ理由で、2トラックのテープをマスタリングのためにニューヨークのグレッグ・カルビ(Greg Calbi/Sterling Sound)に送るときも何もしていない。
※アルバムのクレジットにはDoug Saxとあるが、ディランのマネージャーによりそれは間違いだと確認された

私は、マスタリング中もほとんど何もされていないと理解している。ボブにリファレンスCDを渡したら、その音を凄く気に入ってくれて出荷する分もこのままの音にして欲しいと言った。ディランのシナトラカヴァーのプロジェクトを知った人達が懐疑的に私に訊いてきた。私は「音を聴いてから判断してくれ」と答えた。仕事が終わった後、ボブのマネージャーからCDを受け取ったダイアナ・クラールが深く感動し涙を流したと電話をしてきた。CDがリリースされると懐疑的だったアーティストや知り合いが電話してきて言った「アル、あなたは正しかった」。

私は最初にプレイバックを聴いたあのときから、これが特別なものだとわかっていた。



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まぁ長い割には、今まで彼が話してきた事の総まとめという感も無きにしも非ずだが、マイクや機材の詳細はさすがと言わざるを得ないインタヴューだ(※半年ほどすれば原文がウエブで公開されると思う)。自分がフェーダーを触りたくなかったからレヴェルの調整をミュージシャン側でさせるなど、彼自身ディランの世界に入り込み、ある意味、この変な状況を楽しんでるのがわかる(仕事をしなくても良いと言われてるも同然な状況なのだから)。世界最高のエンジニアをただの管理人さんのように扱う…いやいや、だからこそ最高に安心した状況でレコーディングは出来るというものだ、ディランの人使いの要領の良さだけは認める(笑)。普通なら「全然(ミキサーとしての)仕事をさせて貰えなかったよ。ハハハ」で終わってるだろう。

いわゆる「一発録り」の理由にシュミットは「彼は何がレコーディングされたかを人々が正確に感じて欲しいと思っていた。それゆえにスタジオマジックも修正も調整も編集もしたくなかった」と一つの答えを出してくれている。なるほど、これはディランの「アンカヴァー」コンセプトに通じているのかもしれない。純粋というか、そのままの状態というか…

ラフヴァージョン…手を加えていない物を選びがちなのは昔からそうだ。 ただそれは手が加わっているとかでは無く、作り込みの問題のような気がする。画家がどこで筆を置くかという話だ。それはもうディランの感覚そのものでしかない。ただシュミットにすれば珍しかっただろう。エンジニアが「もっと良くなりますよ」と言ってそれを拒否する人は少ないだろうから。

それにしても驚くべきはマイクの選択だ。真空管とリボンだけを使っている。テクニカのAT4080以外は全てヴィンテージマイクだ。ディランのU47は、そう今ステージの上に立ってるマイクだ。まぁあれは、クローンのように思えるが…

しかし、ここまで言われるとやはりこのアルバムはアナログで聴くべきかもしれない…というわけでアマゾンにリンクを張っておこう(笑)。


Vox - Neumann U47 (Tube) - Neve 1073 - Fairchild (mono comp) - live chamber number four
Acoustic Guitar - Audio Technica AT4080 (Ribbon) - Neve 1073
Electric Guitar - Audio Technica AT4080 - Neve 1073 (Ribbon) - Bricasti M7 (reverb)
Pedal Steel - Audio Technica AT4080 - Neve 1073 (Ribbon) - Bricasti M7 (reverb)
Upright Bass - Neumann M149 (Tube) - Neve 1073
Drums - AKG C24 (stereo Tube) - Neve 1073

Horns - Neumann M49 (Tube) [for ambient]
Trombone - Royer 122 (Ribbon)
Trumpet - Neumann U67 (Tube)
French Horn - Neumann M149 (Tube)


フェアチャイルドのコンプ。もしかしてVSTのプラグインかと思われた方がいるかもしれない。本物だ(笑)。真空管だ。ほとんど通しただけのように言ってるが事実だろう。ヴィンテージと言えばコンソールもヴィンテージだ。ニーヴ 8068は、もともとエアースタジオ時代のジョージ・マーティンとジェフ・エメリックの仕様書に基づいて造られた3台の内の1台らしい。

ディランのエコーに関してシュミットは、キャピトルのライヴチェンバーの4番を使用したと言っている。キャピトルには、タワーの地下9メートルのところに8つのエコーチャンバーを持っている。Chamber…この場合、囲まれた空間といった方が良いだろうか。



キャピトルはこういう音が響く部屋を地下に8室も持っている、シュミットは、そのナンバー4をいつも好んで使用している。エコーチャンバーは、このチャンバー内にスピーカを置き、そこから音を出してマイクで拾う。それでエコーを付加するというシステムだ。


チャンバーへの入り口


キャピトルのチャンバーの一つ

電気的に作ったエコーではなく、天然のエコーというわけだ。当初、あの深いリヴァーブは(有名な)EMTかと思っていたが、これだけヴィンテージ、スーパーウオームを追求しているのなら、エコーチャンバーという選択になるのは当然だろう。キャピトルだったらそれが可能だ。

ヴィンテージ…思い出せば、テンペストのエンジニア、スコット・リット…ディランをヴィンテージ機材で録ることを夢見てスタジオ造った。まさに彼がやりたかった事がここにあるじゃないか…あの時のディランはこんな事に全く興味が無さそうだったが…。スコット氏は今回にアルバムをどう思ったのだろうか? まぁこれがディランとしか言いようがないだが…
ハロー、ボビー





ちなみにニール・ヤングのStorytoneは、ディランのShadows In The Nightの前にリリースされたが、録音はその後だった。シュミットは、ディランの録音で得た物をここで総動員させている。彼の話を聞いていると両者はまるで兄弟アルバムのようにさえ思えてくる。


■昨年11月にリリースされたニール・ヤング、Storytoneについて

アル・シュミット:ニール・ヤングのストーリートーンは、ほとんどがディランのShadows In The Nightと同じ方法で録音された。全てライヴルームで録音され、ヘッドフォンもなし、ミニマルミックス、24トラックと2トラックテープのライヴ録音、そしてプロツールスのバックアップ。2トラックからラフミックスの使用。イースト・ウエスト・スタジオでビッグ・バンドと1日、それから65人のオーケストラと34人のコーラス隊と共にソニーピクチャーズのバーブラ・ストライサンド・スコアリング・ステージで2日間かけた。ヴィンテージコンプレッサー、EQ(イコライザー)、M149やロイヤー、オーディオ・テクニカを含む50本以上のマイクを持っていった。ニールのヴォーカルマイクはノイマン M49だ、あのバーブラのマイクだ。(※ディランの横に置かれたアンビエントマイク)…それで、私がどう学んだかというと。ミキシングは、フェーダーを上げて、少し調整しほんの少しのEQかコンプレッサーをかけて、それでおしまい。それはかつて私たちがレコードを作るのにやっていた事だ。でも本当に楽しい!!





●The Best Time For Sound

アル・シュミット:音に関して言えば、60年代から80年代初期のアナログテープで録音していた時代が一番良かったと思う。初期のデジタルは酷く不快なものだった。しかしデジタルも年月を重ねた。96KHzは、まぁ我慢できる。192KHzは凄いと思う。今のデジタルは大好きだ。そして良くなっていくだろう。その上デジタルは、歌えない人や演奏できない人と仕事をするときはアナログより勝っている。編集や修正のためにデジタルツールが必要だろう。とはいうものの、デジタルにはまだ欠点がある。私は箱の中で仕事がしたくない、みんなそんな箱で作ったアルバムをグレートサウンドと言うが、私はコンソールを使いたい。問題なのは、今はコンソールを使うような予算が取れなくなってきているという事だ。その結果、音のクオリティで悩むことになる。勿論、一方で、私の嫌いな劣化した一般向けのフォーマット(lossy consumer formats ※MPナントカとかM4ナントカ)もある。その上ラウドネス・ウォーloudness war)の結果アルバムは聴くに堪えないものになった。

私は"Turn Me Up! "というクラブに入っている。それは何を信じてるかと言うことだ。ここにヴォリュームのツマミがある、音をでかくしたいとおもったらそれを回すだけだ、turn it up!

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今回のアルバムは勿論ディランに驚いたがアル・シュミットにはそれ以上に驚かされた。最初に聴いた時、その仕事に思わずツイートをしてしまった(笑)。それにしてもディランよりも10歳以上も年上の85歳でありながら、あらゆることがめまぐるしく変化するレコーディング業界の最前線の現場に立っていることすら驚きなのに、まだ、何かを学習し得た物をすぐに実践に投入し試している。凄い人だ。アル・シュミットは決まった音しか出せないと言う人もいるが、そんなの当たり前ではないかと思う一方で、やはり優れたプロデューサー次第でどうにでもなるのだと感じた。そして最後にはミキサーのくせに「少しだけ調整するだけだ」と仙人のようなことを真剣に言ってるのが面白い。



PS
ポール・マッカートニーの場合(Kisses on the Bottom 2012)




当初ポールはU47を気に入っていなかったようだ。とプロデューサーのトミー・リピューマは言ってる。ポール自身は、アル・シュミットにナット・キング・コールが使ってたマイクだと言って、そこに置かれ、凄く威圧感を感じたと言ってる。しかしそれを越えなくてはいけないと、それで色々と試してある種のゾーンを見つけて乗り越えることが出来たと語っている。


あの椅子に座ってるな(笑)
何もかもがディランと正反対のように見えるが、根っこは同じような(笑)…
ポール → ディラン → ニールと何か繋がりあれば面白いが…ダイアナ・クラールが何か知ってるかも(笑)。ああ一番知ってるのは当事者のシュミットか…




Paul McCartney and Neil Young Capitol Records - Los Angeles, California - 09.02.12












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