2013年10月19日

Chronicles

2013年10月19日


ボブ・ディランの本棚




クロニクルズといえば、ディラン・ファンにとってバイブルにも等しいものだが、ファン以外の人にとっては、その印象が少々違うようだ。過去のことがあまりにも詳しく書かれていたり、大仰な表現のせいかそれが「自伝」とは信じがたいというのがその意見だ。

以前テンペストのレヴューで紹介したラジオ番組、



冒頭のやりとりに

Did you read Chronicles ?
Did you believe it ?

「クロニクルズ読んだ? あれ信じられる?」みたいな感じ。


実際、出版元ですら「ディランの人生をベースにしたノンフィクション・ストーリーで、自伝では無い」と言っていたのだ。そのことに怒ったディランは凄腕の事件屋じゃなくエージェント、アンドリュー・ワイリーを雇いヤクザのようにゴネて再契約に有利な条件を勝ち取ったのだ。
ジャッカルと呼ばれている男


まぁしかし、クロニクルズが嘘っぱちと言うなら、ディラン・ファンはいったい何を信じれば良いのかと、丘の上でひとり風に吹かれたり、海に向かってバカヤローと叫びたくなるので、これだけは勘弁して頂きたいものだ(笑)。そんな「ホンマかいな」と言われているクロニクルズに別の角度からもうムチを打つように「ペテン師」と呼ぶ人物が現れた。

Scott Warmuthだ。

スコットは、ディランのクロニクルズには色んな本から引用されたものが散りばめられていると言っている。↓

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クロニクルズについてグリル・マーカスは「信じられない表現で書かれた素晴らしい本だ。ゴーストライターにはとても考えつかないものだ」とインタヴューで語った。私は、クロニクルズにはゴーストライターがいると言いたい。クロニクルズはジャック・ロンドンを通して書かれていて、ジャック・ロンドンの幽霊が本に宿っている。私は、マーカスが特に示した言い回しを観察し議論を始めたいと思う。

ここに彼が言及した箇所がある。

"Ricky Nelson was singing his new song, 'Travelin' Man.' Ricky had a smooth touch, the way he crooned in fast rhythm, the intonation of his voice. He was different than the rest of the teen idols, had a great guitarist who played like a cross between a honky-tonk hero and a barn-dance fiddler. Nelson had never been a bold innovator like the early singers who sang like they were navigating burning ships." (日本語版 P017)


その最後のセンテンスに含まれるものを見たとき、それがディランがジャック・ロンドンの素材を何十回も何十回も使っていると思うようになった、最初のきっかけだった。

ディランはとても賢くやっている。Travelin' Manは船乗りが港、港にいるガールフレンドを渡り歩くという、スムース・チューンだと言うことは良く知られている。

ディランがネルソンと比較している大胆な改革者(bold innovator)は、ジャック・ロンドンの短編「The Seed of McCoy(マッコイの子孫)」の要素をベースにしているようだ。

物語では船体は小麦が燃えた炎に包まれていた。そしてロンドンはこう書いている

"Captain Davenport had been under the fearful strain of navigating his burning ship for over two weeks, and he was beginning to feel that he had enough."

これは偶然の一致では無く、意図的に行われていると思っている。そしてこれがこの本を通じてディランが行っている仕掛けの一つの例なのだ。



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つまり、ディランの言う「燃えさかる船を操るような」とは、「二週間もの間、燃えさかっている船を操り続けられるくらいにタフで強靱な」という事を意味しているのだろう。スコットはこんな感じで、色々な引用について言及している。
The Hidden Confederates in Bob Dylan's Attic


また、そうした多くの引用と合わせて、隠れたパズル、ジョーク、秘密のメッセージなど沢山のものが本の中にあるらしい。
Bob Charlatan Deconstructing Dylan's Chronicles: Volume One (PDF)

この中で、一つ気になったのがディランがロニー・ジョンソンから教わったという奏法(日本語版 P191)。多くのミュージシャンがこの箇所を「いい加減な嘘、デタラメ」だと片づけたとスコットは言ってる。

ネットでも話題になった。

Bob Dylan's "Lonnie Johnson" Guitar Method? (UNOFFICIAL MARTIN GUITAR FORUM)
What I learned from Lonnie Johnson (Scott Smith)
Mysterious Bob Dylan musical theory (ASK Meta Filter)
Does anyone know what Bob Dylan is talking about here? (TDPRI)

個人的にはディランの書いてる事はサッパリわからないが、まぁ…アレだろうか(笑)。

そして、スコットは、クロニクルズのパズルとしてこのような図を載せている。
A Treasure Map to Bob Dylan's Recent Work


ここまで来ると、もはやダヴィンチ・コードか死海文書か…というか何か狙ってるのか(笑)もうほとんど陰謀論街道まっしぐら、みたいなのも無きにしも非ずだが、スコットの言うようにディランが処かの文章を引用しているという指摘は、あながち否定は出来ないようにも思う。

それにしても、ディランの引用のやり方がなーんか変だなぁ歌でも(笑)。部品か、なにかのように、そのままの形で置かれている。だから引用元を知っていれば「おや?」と気がつく。知らなければそのままだ(笑)。スコットのように気がつけば面白くて仕方が無いだろう。それが独りよがりだろうと、そういうことを詮索され続ける、まぁそれが…。歌詞もカットアップで作っているのもあるのだろう。歌でも同じようなことを昔からやってるのは皆さんもご存じだろう。

Like a Rolling Stoneの引用元はハンク・ウィリアムズのLost Highwayが有力だろう



それから何十年も経った最新作でも…



絵だって同じ事をやってる。
Public Domain


そういう意味では滅茶苦茶に一貫している(笑)。

スコットは、ディランが引用したと思われる本を「ボブ・ディランの本棚」としてまとめてくれているので興味のある方は是非研究して頂きたい。ディランは編集者なしに本を書いたと言っていた。そしてそのことにあまり触れたくないとも言っていた。もし、ディランが意図的に仕込んでいたのなら、それが編集者によってズタズタにされてしまう…という可能性は否定できない、まぁ、やりようは幾らでもあるだろうけど…

A Bob Dylan Bookshelf


そういえば、Tweedle Dee & Tweedle Dum、この曲名がBethany Bultmanという人が2000年に書いたニューオリンズの旅行ガイドからの引用だと言う。まさにLove And Theft。デイヴィッド・キャラダインのSNLのコントがまんざらでは無いと思わせる話だ(笑)。






最後に、ショーン・ペンの渋い声でクロニクルズを読んでもらおう。何を言ってるのかサッパリわかんが、これを子守歌代わりに聞きながら寝ると何故かよく眠れるのだ。試してくれ(笑)。ショーン・ペン、娘がディランで息子がホッパーだ。



Chronicles, Volume One by smz on Grooveshark

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